この節では、自分自身(自社)について考えるべき項目を説明しています。
自社について考えるのは、消費者に競合他社に無い「強み」を感じてもらって「あきらめていた悩み」を解決するのが目的です。
シンプルに言えば、すでに開業しているなら、顧客に「なぜ、うちを選んでくれているのか?」と聞けば済むことです。
しかし、起業前のように「顧客がいない」ときは、自分で考えてみる必要がありますが、一言で「強み」と言っても、これを自分で見つけるのは、かなり難しいものです。
ここでは「強み」を自分で考える場合の手順を記載していますので、次の手順で考えてみてください。
①自社が自由に使える「資源」を可能な限り多く書き出す。
②その「資源」の差別化を考える。
この「差別化された資源」をベースに消費者が「自分のあきらめていた悩みを解決するのに一番適している」と感じる要因が「強み」になります。
それでは、まず、資源から見ていきましょう。
資源とは「商売上、利用できる物資や人材等」のことで、資源には次のような項目があります。
①ヒト | 経験・知識、従業員のレベル etc |
②モノ | 商品、製品、サービス、備品、施設 etc |
➂カネ | 資金 |
④情報 | 顧客情報、自社のノウハウ etc |
⑤時間 | 使える時間(生産性、作業時間、意思決定までの時間 etc) |
⑥知的財産 | 特許、ブランド、ネットワーク etc |
これらの資源で自社が使えるものを多く書き出し、把握します。
逆に言えば、これらの資源の中で「使いたい気持ち」があったとしても、「自社が持っていないもの」は調達方法を考える必要があり、調達に時間が掛かる場合は外して考えます。
特に起業間もない小規模事業者は、資金が不足しがちになります。
大手企業は販売促進一つ取っても、多額のお金を使い、物量で攻めてきます。
小規模事業者がこれに対抗するには、例え資金が調達できたとしても真正面からの資金勝負は避け、「時間」を掛けたり、「手間」を惜しまないというように自社が十分に使える資源で勝負することが大切です。
次に差別化ですが、差別化は図1にあるように基本的には「3つの軸」しかありません。
この3つの軸のうち、どれかの軸で競合他社に打ち勝つ必要があります。
この打ち勝つというのは、消費者に「競合企業より優れている」と思ってもらうことです。
図1:差別化の3つの軸
出所:「ナンバーワン企業の法則―勝者が選んだポジショニング」 M.トレーシー & F.ウィアセーマ
この3つの軸の内容は、次のようになります。
1.商品軸 | 高付加価値の商品・サービス | 例:高級ブランド店 etc |
2.密着軸 | 顧客一人ひとりへの細かい対応 | 例:地域電器店 etc |
3.手軽軸 | 低価格、品揃え、近距離感 | 例:スーパー、量販店 etc |
1の商品軸は例にあるように高級ブランド店等が該当しますが、この場合、ターゲットは富裕層でファンの創造、価値は「所持している優越感」、豪華な作りの店舗、イメージを大切にした取り組み、といったものになります。
2の密着軸も例に記載している地域電器店で考えると、ターゲットは高齢者層、価値は「かゆいところに手が届く安心感」、小さい店舗で在庫は少なくして訪問活動が中心、家電量販店と同じ商品ながら価格設定は高く、その分、呼ばれたらすぐに訪問する機動性を発揮、といったものになります。
3の手軽軸は家電量販店で例示すれば、ターゲットは20~60歳の幅広い層、価値は「低価格、豊富な品揃え、自宅から近いといった利便性」、大きな店舗で駐車場完備、CM・新聞折込などマス媒体の利用、といったものになります。
上記の例からもわかるように、軸を選ぶことでビジネスモデルは決まってくるということです。
また、ビジネスモデルを組むには投入できる資源が必要なため、その資源を自分が持っていない、もしくは持っていても微量で、十分に用意もできないのであれば実現は不可能です。
また、近年ではネット環境の充実で、ビジネスモデルにも変化が表れています。
家電量販店のような業態をオープンするには、店舗や商品在庫などに多額の費用が掛かりますが、ネット通販のプラットフォームを使用すれば初期コストは大幅に削減できます。
その為、ビジネスモデルについては、現在の環境についても合わせて考えることが望ましいといえるでしょう。
自社について考えるとは、まず自社の資源を確認し、その資源を活かすには「どの軸で差別化を図るか?」という手順を踏んで考えることです。
資源を確認し、差別化の軸を選ぶことで「自社の強み」が見えてきます。
「強み」とは、「資源によって裏打ちされた差別化」になります。
例えば、家電量販店なら、他社家電量販店にない「本部商談のノウハウ」
→結果として「安い仕入れ値の実現」、手軽軸の圧倒的な「低価格」の実現
———というようになります。
根拠の無い差別化は「強み」とは言えず、それを支えているのが資源になります。
起業後、顧客ができれば「なぜ、うちを選んでくれているのか?」ということを質問し、自社の考えた「強み」と一致しているかを確認するといいでしょう。
また、「売れるしくみづくり」において「数値化できるものは全て数値化する」ということが大切です。
自社の資源や差別化項目は数値化できる項目も非常に多くあります。
数値化できるものは全て数値化し、正確に把握するようにしましょう。
①まずは自社の「強み」について考えましょう。 →自社が自由に使える「資源」を可能な限り多く書き出す。 →その「資源」の差別化を考える。 →「差別化された資源」をベースに消費者が「自分のあきらめていた悩みを解決するのに一番適している」と感じる要因が「強み」。
②差別化には基本的に「3つの軸」があります。 →1.商品軸 →2.密着軸 →3.手軽軸 |